Family Creative 〜子どもの時間の流れを生きてみる〜
6月のBody Synergy Kidsオンラインクラス、Family Creativeの様子をご紹介します。
6月から始まったFamily Creativeは、4月、5月の親子オンラインクラスとはまったく違う切り口の、いろいろな表現媒体を使いながら、からだであそぶ親子クラス。4回のクラスのなかで、いろんなあそびに取り組みながら、参加者の方々の変化を大きく感じる1ヶ月となりました。
このクラスでは、絵を描いたりもしますが、いわゆる何か具体的で、実在するものを「上手に」描くことはしません。からだで感じたことを、いろいろな「感触」「テクスチャー」として、軌跡のように、地図のように描きとっていくような絵です。一般的にはこれは抽象画にあたるのでしょうが、実際にからだで体感したことを色やかたちでメモを取るように描いていくので、描いている本人にとってはむしろより具体的な絵の描き方だったりもします。
6月のクラスが始まってまだ間もない頃、Iちゃんは具象画である蝶々や人を描いていました。別にそれが間違っているわけでも、不正解なわけでもありません。自分が普段生活しているなかで気になっているものだったり、大好きな人だったり、本人が描きたいと思ったものを描いているのだな、と思いました。Iちゃんはクラス中、絵を描いても、踊っても、お話ししても蝶々がずっとテーマになっているようでしたので、そのまま様子を見ることにしました。すると、週を追うごとに、だんだんと感じたもの、見えたものをそのまんま線や形で表す方法もあるのだと、まだ幼いIちゃんの鋭い感性で感じ取ったのか、まったく具象的な絵は描かなくなりました。これは、Iちゃんの中で自分自身のからだの中で起こっていることをそのまま描いてもいいんだ!誰かに通じるようにわかりやすく上手に形を描くことだけが絵じゃないんだ!という表現の語彙を見つけた瞬間でした。
そして、先週の最後のクラスでは即興で弾かれるヴァイオリンの音色を描きとったり、踊ったりしたのですが、クラスのあとに、できあがったヴァイオリンの音色の絵を使って、「おうちに美術館を作ろう!」という宿題を出させてもらいました。すると、Iちゃんは壁の低い位置から高い位置にむかって、まるで蝶々が羽ばたくように展示してくれたのです。最初のクラスで気になっていた蝶々が、ずっと継続してIちゃんの中にあり、それがこういった形で数週間後に表現されたことに私はすっかり感動してしまいました。大人の感覚では、このクラスはこのクラス、他のことは横に置いておいて、今はこのクラスに集中しよう!と思いがちですが、Iちゃんの中では1ヶ月ずーっと『蝶々』というテーマがあり、具象画を描いたり、抽象画を描いたり、お話ししたり、踊ったりしながら、蝶々について探求していたと言えます。これぞ探究学習です。そして、これが子どもの時間の流れ方。大人の時間の流れ方よりずっとずっとゆっくりとゆったりと蝶がゆらゆらと舞うように流れているのだな、ということにハッとしました。
本当はこのクラスに参加していただけのは5歳から。それは、クラスのねらいを理解し、クラスの内容を十分に楽しんでもらえるように私が設定した年齢です。しかし、Iちゃんのお母様は、「絵も好きだし、踊るのも好きなので参加させてください」とおっしゃってくださり、始めたその日はまだ3歳のIちゃんにも参加していただいたのでした。まだ幼いIちゃんのクリエイティビティがこんなにも花開いたのには、きっとお母様がクラスの以外の日常の中でIちゃんが見たいもの、感じたいものにゆったりと寄り添いながら、いろんなお話をしてくださったんではないかな、と思います。のちにお話を伺うと、「このクラスに参加したのは、私も娘と一緒に学んで、一緒に成長したかったからなんです」とおっしゃってくださいました。こんな素晴らしい親子関係が築けているIちゃんが5歳になるのを待つことなくこのクラスに参加してくれて、本当によかったな、と思いました。そこには、子どものテンポに寄り添いながら一緒にクリエイティブな時間を持つことで生まれる親子の対話がありました。
親としてしつけをしたり、面倒を見るだけでなる、子どもと「一緒に」時間を過ごすことで、親も人間として成長したい。そんな親の在り方をこのお母様の言葉から学ばせていただきました。
こうしたクリエイティブなクラスの大切さはその場でその価値がわかるものではありません。25メートル泳げた!とか、サッカーで何点ゴールを決めた!とか、英語を読み書きできるようになった!というようなものではありません。しかし、こうしてゆっくりじっくりクリエイティブな時間を一緒に過ごすことで、1ヶ月後にやっとその子の中にあった好奇心、そしてそれについてとことん探求を続けていること、最後にはまったく今までになかった形で表現をするところにまでこぎつけるというIちゃんのプロセスが見えてきました。何かに興味を持ち、それをとことん追い求め、そして表現することは、まさにこれからの社会を生き抜く非認知能力そのもの。その成果が目に見えないので、その重要性も見落としてしまいがちですが、「人生」という単位で見た時に、このような能力を育てることは何メートル泳げることより、何点ゴールを入れるより、何単語英語で話せるようになるよりずっと大切です。極端な話、そういったことは子ども時代でなくても、本人が望めば後からいくらでも身につけることができる技術です。しかし、生きることに必要な非認知能力は放っておいたら身につきません。水泳やサッカーや英語と同じように、練習や訓練(繰り返される体験)が必要なことです。クリエイティブなことに定期的に、日常的に取り組み続けることで、誰にも思いつかないようなアイディアを、辛抱強く、形にできるような人間が育つのです。
7月のFamily Creativeがまた今日から始まります。今月はどんな驚きと発見に出会えるのか?またまた楽しみです。
即興で奏でらるヴァイオリンの音色。

